ビッグ・チーズ

08 30, 2008
小学校からの幼なじみのトクアン(トク兄)が僕の部屋に来た。この物価高騰の世の中、彼は雪印のカマンベールチーズを一箱、僕に手渡した。さらに彼の持参したケーキ屋の紙袋から、同じチーズがもう一箱出てきた。
どうやら一人に一箱のチーズが割り当てられたみたいだ。僕はテレビのニュースで乳製品の品薄が目立ちチーズは棚に並んでいないスーパーもある、というような報道を最近みたのだが、現実には美味しそうなチーズが、しかも自分のために一箱、目の前にあることに贅沢さと、少々心地よい罪の意識を感じた。
あえて言ってみるとすれば、ソー・ビッグ・チーズ・フォー・ミーである。
切ろうか?と聞いて彼の、かぶりついたらいいよ、との言葉で更に気持ちが高揚した。白いチーズを最初は小さく噛み千切る。ミルクの発酵した豊穣なテイストが口いっぱいに広がる。
今宵、僕たちはCanadian Clubを飲んでいて、彼が持ってきたペリエで割るとまあまあいけると思う。彼はカナダの田舎の味がするというので、もう一口飲んでみたがあまりその辺はわからない。

その辺に転がったままになっているクラシックのCDを手に取り、トクアンが興味を示している。この歳になって聞いてみようかなと思ったんだ、と言うとマーラーの曲はよく分からないと言う。「メジャーなんだよね、全部」 「メジャーってのはメジャーコード?」 「うん」。僕は5番と、ついこの間、龍さんというこれまた幼なじみから借りた2番「復活」を少し聴いた程度だが、確かに5番は発奮させられるメジャーな感じだ。マーラーを最後までなかなか聴けないというトクアンはクライバーの指揮するベートーベンの4番がいいと言う。
どこがどういいのかなんて決して言わない。彼は事前に何らかの知識を持って音楽を聴くことを、できるだけ避けるように気を配ってくれているのだ。次々と指揮者の名を挙げていく彼は、中学時代からクラシックを聴き始め、同時にビートルズを知り、好きなものだけを長く聴き続けている。
「サイモン、なんとかって人が岡山に来るの知ってる?」と聞くと、サイモン・ラトルと教えてくれた。僕がラトルの公式HPのコンサートスケジュールの欄に、Nov29・Dec1/Okayama Japan Symphony Hallとあるのを見せると、「ああ、もうこんな人たちが、何と言うか第一人者なんだな」としみじみ言う。彼にとってはラトル氏などは新星みたいな位置づけなのだろうか。
ラトルの岡山公演は龍さんが教えてくれたのだが、S席8万円という破格な値段。キャバクラに換算すると多分16時間位居れるんじゃないか。まあ16時間も女の子と喋ることを考えただけで、暗黒に繋がる洞窟の入口に立たされたような気分になるのだけれども。(村上春樹風)

先日TSUTAYAで2枚のCDを借りた。ヨーヨー・マのシルクロード・オリジナル・サウンドトラックとフジ子・へミングのエリーゼ。僕は2年間のオルガン教室を経て、小学1年生から卒業までピアノを習い、5年生の発表会で「エリーゼ」を弾いた。親の意志によって通わされる男の子の大概の例に漏れず、まったく向上心がなかった。そして6年生。ソナチネの曲が候補に挙がってはいたが上手く弾けず、2年連続で「エリーゼ」を発表会で弾いてピアノ教室を去った。異例だ。しかし潔い去り方だったと自分でも悔いはない。6年間ピアノを習うと普通の女の子ならソナタ、もしくは教本以外の作品にたどりつくのだが、僕はおそらく「エリーゼのために」で終了の運命だったのだからしょうがない。馬鹿親の散財だ。
トクアンはヨーヨー・マに関して上手だと思うと言っただけで、チェロに関してはバッハの無伴奏チェロソナタを聴いてみるといいと言う。近代ではコダーイのチェロソナタ。ちなみにチェロ奏者としては、パブロ・カザルスピエール・フルニエミッシャ・マイスキー等の名前を挙げた。どうしてそんなに名前を覚えていられるのか不思議である。
僕はヨーヨー・マのシルクロードのサントラ製作のドキュメント番組をNHKで見たのだが、楽器の上手な人が揃いも揃って、金持ち気なヨーヨー・マの風貌もあって、これは飲み屋に例えると高級クラブだなと感じた。座って5万円。一流のサービス(音)を提供いたします。決して貴方の機嫌を損ねることはありません。どうかごゆっくりとお楽しみ下さい。NHKはマに2億円払ったという話もある。

僕は「シルクロードって美しいんだけど、ほとんど何の意味も見い出せないんだよね」 「そうかもね」。「同じくビートルズ解散後のポール・マッカートニーのソロ活動は何の意味もないと思う」と少々冒険的に言ってみた。トクアンは、いやいやバンド・オン・ザ・ランまでは素晴らしいと言う。
バンド・オン・ザ・ランはポール自身がドラムを叩いててこれがまた上手だ。トクアンは「ビートルズのホワイト・アルバムは各自が持ち曲を勝手に披露する形で、ビートルズそのものと言っていいけど、その頃からポールはリンゴのドラムに限界を感じて自分でやっていた。」という言葉に僕は違和感を覚えた。
僕はロック、いやポップスの世界で、ポップ・ドラマーとしてポップ・ミュージックのバックで叩く最上のプレイだと確信している、ノーベル賞に値すると信じるドラミングの楽曲をYouTubeで提示した。

 John Lennon "MOTHER"

ああ、英語が理解できたらなあ、とトクアンはしみじみ言う。ジョンレノンの詩は殆どの日本語訳を読んだ。他のミュージシャンの日本語訳は読んだことがない。興味がないから。
肝心の「MOTHER」におけるリンゴ・スターのドラムだが、一発目のスネアから「これは参ったな」状態である。ハイハットが歌っている。「何てことだ」・・・もうこれ以上何も言うまい。音楽を言葉で表現することを私は止める決意をしたはずだ。
しかしトクアンは「このドラムがどうした?」という表情である。「村上ポンタ秀一が好きなドラマーは?って聞かれて迷うことなく何て答えたと思う?」 「・・・」 「リンゴ・スターだよ、って。」 「そうか、陽水のバックやってた人がそう言ったんだ。」(トクアンは意外にも陽水、中島みゆきも聴く)
ジョン・レノンのこのソロになって初めてのアルバムは、一語の曲名が多い。Mother、Love、God・・・。考えてみるとすごい曲名ばかりである。トクアンはジョンとヨーコの馴れ初めについて話し始めた。ロンドンに来ていたオノ・ヨーコが個展を開いて、そこに来たジョンが腐ったリンゴ(作品)を見てそのセンスを認めたらしい。三井財閥の末裔という彼女の育ちの良さや、裕福さには無関係だという。(ま、ジョンもミリオネアなのだし)
しかし、アングロサクソンのヒーローが日本の女を、しかもYOKOのような濃い女を・・・と、トクアンは納得いかない様子だ。しかし人を肌の色で区別するのはナンセンスと、ジョンは本気だったと思う。

 想像してごらん 国家なんて存在しない世界を
 そんなにむずかしいことじゃないさ
 想像してごらん「なにかの為に」殺すことも、死ぬこともない
 宗教だって同じことだよ
 想像してごらん すべての人々が
 平和のなかに生きることを・・・

 君は僕のことを「なに夢見てんの」なんて言うだろう
 でもこんな願いを抱いているのは、ひとりだけじゃないんだ
 いつの日か君もいっしょになって
 世界はひとつになるだろう


ジョンはただ言葉を使って遊んでるんだよね。その時に感じたことをそのまま歌に。確かにそれは遊びだけど嘘ではない。共産主義者や平和主義者が「イマジン」とかでジョンを担ぎ上げる姿勢がくだらないと思う。トクアンの指摘は鋭い。
いや、でもさあ。ジョン・レノンだけじゃなくて、イエローとかジャップとか我々を見下す白人ばかりじゃないと思うけどね。僕はモルモン教の岡山教会に通っていた頃のことを話した。結局入信はしなかったが、英語の勉強ができたし、教徒のアメリカ人たちからは僕を黄色人と見下すそぶりなど全く感じなかった。彼らは決まっていつも穏やかで、僕の話に興味深く耳を傾けてくれた。
「それは宗教の勧誘だからじゃないの?いやあ、ヨーロッパ人にはどこかあると思うんだよね。アジアやアフリカを見下してる所が。」 「いや、ない人もいるって。」 「それは居る。」
しばらく日本と欧米の話になる。クラシック、ロック、モータースポーツなどの発祥の地であるヨーロッパ。日本の浮世絵、電気製品、アニメ。伊能忠敬の優れた日本地図を見て、日本に開国を迫るアメリカは「こんな僻地にも文明があったんだ」と一目置き、江戸を武力的に制圧することをやめ、取りあえず浦賀に上陸から始めた。モルモン教は禁欲的→アーミッシュ。アメリカが日本を開国させたかった理由のひとつに、捕鯨基地にという思惑があった。鯨の脳髄は−40〜50℃でも解けなくて、原子力潜水艦の燃料に利用できる。米は充分な量を確保してから、他国に利用されないようにと捕鯨禁止キャンペーンを始めた。・・・よく色んなことを知っているものだ。
更に話は、やはりというか戦争や政治に移る。
(歳を取るということはこういうことだ)
朝鮮総督府に辞令が出るのは左遷みたいなもの。伊藤博文はとても好色だった。従軍慰安婦を語るには女衒(ぜげん)というブローカーの存在を無視して語ってはならない。副島隆彦のインパクトと信憑性。実はドイツのことに詳しい西尾幹二

我々の話題は最早何でも構わないのだ。与えられた話題でいかに会話ができるか?そう、ジャズのスタンダードでいかにアドリブができるかを楽しむのと同様なのである。
そして収集がつかなくなってくると、ジャズと同様、脳細胞がピクピクと活性化されたまま終了。

     mayako.jpg

しかしながら、話の途中ずっと再生されていた小泉麻耶のDVDについては、私も色々と考えさせられた。
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足の太い女は情が薄いらしい。

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